2026/01/31

メチルフェニデートとの併用におけるクロニジンとグアンファシンの安全性の相違について

要旨

クロニジンとグアンファシンは,いずれも代表的なα2アドレナリン受容体(α2A)作動薬であり,ノルアドレナリン(NE)神経陰性フィードバックによってNE系を抑制する.
特筆すべきは,クロニジンとメチルフェニデートの併用において突然死の報告が存在する一方で,グアンファシンとメチルフェニデートの併用においては同様の報告が確認されていないことである.その原因またはリスクレベルの相違について調べたものである.

クロニジンの作用機序

クロニジンは,α2A前シナプスおよび後シナプスの両方に作用するが,特にα2A前シナプスへの作用が顕著である.α2Aに対して強力な作用を示すが,選択的であるというわけではない.また,I1-イミダゾリン受容体(I1)への作用も確認されている.
クロニジンの分布範囲は広く,また降圧剤としての特性が目立つ.交感神経の最上流である延髄吻側腹外側野(RVLM)ニューロンの,α2Aに対し強く作用することがわかっている.これにより,交感神経系の活動が強く抑制されるとされる.
I1はRVLMに高密度で発現しており,この受容体に対しても作動薬として振る舞うということは分かっているが,どこまでの意味をなすのか詳細までわかっているとはいえない.
確かにいえることは,広範囲に分布するということ,非選択的α2A作動薬であり,α2A前シナプスに強力な作用を示すということだ.結果として,NE系を強力に抑制し降圧作用を示す.反跳高血圧のリスクが高いことも知られている.単一にいえることではないが,場合によっては,単剤であっても致死的になりえる.

グアンファシンの作用機序

グアンファシンは,選択的α2A作動薬である.α2A前シナプスおよび後シナプスの両方に作用するが,α2A後シナプスに対して強力な作用を示す.α前シナプスに対しても作用するとされているが,作用強度は弱い.
グアンファシンは,特に前頭前野皮質(PFC)および周辺に分布する傾向がある.PFCおよび周辺のα2A後シナプスに対して強力な作用を示し,NE系を調整するように振る舞う.PFCおよび周辺におけるα2A前シナプスへの作用では,環状アデノシン-リン酸(cAMP)への抑制が支配的である.
RVLMへの影響は極めて弱く,I1に対しても意味を成す作用は認められていない.
降圧作用は認められてはいるが,他の降圧剤や利尿剤との併用だとか,房室ブロックのある者を除いては,致死的になることは稀である.
少なくとも日本国内で製品化されているものに関しては,徐放剤であるということも重要であろう.

メチルフェニデートとの併用

メチルフェニデートは,ドパミントランスポーター(DAT)およびノルアドレナリントランスポーター(NET)再取り込み阻害剤として作用し,シナプス間隙におけるドパミン(DA)およびノルアドレナリン(NE)の遊離を引き起こす.謂わゆる精神刺激薬(刺激薬,興奮剤,文脈によっては覚醒剤)であり,単に報酬系や覚醒系に作用するだけとはいえず,少なからず心血管イベントを引き起こし,一般的には用量依存的にその傾向が強まるとされている.
クロニジンとグアンファシンは,いずれもα2A作動薬であるため,その作用と副作用にはある程度の共通点がある.しかし,副作用の重篤さや併用薬との相互作用に関しては,両薬間に差異が存在する.特に,メチルフェニデートとの併用には気になる点がある.
クロニジンとメチルフェニデートの併用においては,一部,突然死の報告があがっている(Vitiello, 2008).しかし,作用機序が類似しているグアンファシンとの併用においては,致死的な突然死といった報告は確認されていない.“クロニジンの作用機序”と“グアンファシンの作用機序”で記述した内容が,強く意味を成していると考えられる.
クロニジンとメチルフェニデートの併用では,メチルフェニデートによるNE過剰がいわば強制的に強く抑制され,また心血管への影響も大きいことから反跳による致命的な結果が生じる可能性が高いと思われる.
グアンファシンとメチルフェニデートの併用では,メチルフェニデートによるNE過剰が調整される形となり,クロニジンとの違いから安全性が比較的高いものと思われる(McCracken et al., 2016).加え,ADHD症状の改善に寄与すると考えられている(McCracken et al., 2016).

参考文献

Vitiello B. (2008). Understanding the risk of using medications for attention deficit hyperactivity disorder with respect to physical growth and cardiovascular function. Child and adolescent psychiatric clinics of North America, 17(2), 459–xi. https://doi.org/10.1016/j.chc.2007.11.010

McCracken, J. T., McGough, J. J., Loo, S. K., Levitt, J., Del’Homme, M., Cowen, J., Sturm, A., Whelan, F., Hellemann, G., Sugar, C., & Bilder, R. M. (2016). Combined Stimulant and Guanfacine Administration in Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder: A Controlled, Comparative Study. Journal of the American Academy of Child and Adolescent Psychiatry, 55(8), 657–666.e1. https://doi.org/10.1016/j.jaac.2016.05.015